- サックスが上手になるために名曲を聴きたいと思ってるんだけど……
- 耳をよくするためにどんなCDを聴いたらいいのか分からない
- サックスの名曲・名盤を教えて!
いい音楽を演奏するためにはいい音楽を聴くことが大切です。しかし、どんな音楽を聴いたらいいのか分からないサックス初心者の方が非常に多いです。
私は音楽経験が30年ほどあり、400枚近くのCDを持っています。処分したものを合わせれば少なくとも1000枚は聴いています。その中から、サックスの上達のために聴くべき名盤を10枚厳選してお伝えします。
この記事を読んで実際に名盤を聴けば、良い音楽を演奏することができるようになります。
最初に聴くべき名盤は「ブルー・トレイン(ジョン・コルトレーン)」「サキソフォン・コロッサス(ソニー・ロリンズ)」「サムシン・エルス(キャノンボール・アダレイ)」です。
サックス名盤・名曲10選の選出基準
サックス上達のために聴くべき名盤・名曲の選出基準は次の3つです。
- 効果的に耳を成長させることができる名盤・名曲であること
- 他のミュージシャンとコミュニケーションが取りやすい名盤・名曲であること
- 良質な環境で100回以上聴いた名盤・名曲であること
効果的に耳を成長させることができる名盤・名曲であること
効果的に耳を成長させることができる名盤であることが最初の選出の条件です。
名盤には必ず学べることがあります。しかし、初心者には学ぶことが難しい場合もあります。
そこで、初心者でも分かりやすい名盤を上位に選出しています。また、音楽を演奏するうえで重要なことを学べる名盤ほど上位に選出しています。
他のミュージシャンとコミュニケーションが取りやすい名盤・名曲であること
その名盤を聴き込むことで、他のミュージシャンとコミュニケーションが取りやすいものほど上位に選出しています。
やはり、多くの人が聴いている名盤の方が話が盛り上がることが多いですし、楽しみも増えます。
良質な環境で100回以上聴いた名盤・名曲であること
個人的な理由で恐縮ですが、私自身が数十回しか聴いたことがないものは選出していません。私自身がよく聴いていないものをおすすめするのは読者の方にも奏者の方にも失礼になってしまいます。
- CD以上の音源
- ある程度の品質のプリメインアンプ
- ある程度の品質のスピーカー
この条件で少なくとも100回は聴いたことがある名盤のみ厳選して選出しています。
サックス上達のために聴くべき名盤・名曲10選
1.ブルー・トレイン(ジョン・コルトレーン)
録音時の年齢 | 31才 |
録音された年(西暦) | 1957年 |
使用サックス | テナーサックス |
収録時間 | 42分 |
まずはジョン・コルトレーンの名盤、「ブルー・トレイン」です。コルトレーンの初期の代表作であるブルー・トレインはサックスを学ぶ上で絶対に外すことはできません。
ある程度のキャリアがあるジャズサックス奏者であれば絶対に聴いたことがあるはずです。
コルトレーンの演奏は、すさまじく感情(情熱)がのっています。音楽で感情を表現するとはどういうことなのかを教えてくれるのが「ブルー・トレイン」です。
2.サキソフォン・コロッサス(ソニー・ロリンズ)
録音時の年齢 | 26才 |
録音された年(西暦) | 1956年 |
使用サックス | テナーサックス |
収録時間 | 39分 |
最初にコルトレーンを聴いたら、次に聴くべきはソニー・ロリンズです。ロリンズで一番おすすめなのは、代表作でもある「サキソフォン・コロッサス」です。
コルトレーンとロリンズは二大テナー奏者と言われます。それほどテナーサックスにおいてこのお二方は頭一つ抜けています。
本当に驚くのは、「サキソフォン・コロッサス」を録音したときはまだ26才だということです。なぜ26才でこれほどの演奏ができるのか、正直言って全くわかりません。
コルトレーンと比べると、ロリンズは明るくおおらかな演奏です。ぜひ、コルトレーンとロリンズの違いを味わってください。
3.サムシン・エルス(キャノンボール・アダレイ)
録音時の年齢 | 30才 |
録音された年(西暦) | 1958年 |
使用サックス | アルトサックス |
収録時間 | 43分 |
これまでにコルトレーンとロリンズを紹介してきました。二大テナー奏者の演奏は素晴らしく、この2枚だけでも十分テナーサックスが楽しめるのですが、1つだけ問題があります。
それは「自分が演奏するイメージが持てない」ということです。
もちろん楽譜は存在するのですが、「ブルー・トレイン」や「サキソフォン・コロッサス」を聴いて、「自分も演奏してみよう」とはならないのではないでしょうか。
お二人の演奏に圧倒されてしまって自分が演奏するという方向に意識が向かないのです。
そこで、次の名盤はキャノンボール・アダレイの「サムシン・エルス」です。
もちろんキャノンボールの演奏にも圧倒されてしまいますが、キャノンボールのおかげで「枯葉」がジャズ・スタンダードになったと言われています。
キャノンボールのおかげでジャズが一般大衆にも楽しめるようになったのです。
そんなキャノンボールの演奏です。キャノンボールのように演奏することはできませんが、たとえ下手でもキャノンボールは優しく見守ってくれそうな気がします。
4.バラード(ジョン・コルトレーン)
録音時の年齢 | 36才 |
録音された年(西暦) | 1962年 |
使用サックス | テナーサックス |
収録時間 | 31分 |
再度コルトレーンの登場です。コルトレーンほど音楽から情熱が感じられるサックス奏者はいないと個人的には思っています。
「音楽で感情を表現する」とはどういうことかを理解することは、いい音楽を演奏する上で何よりも大切なことです。
このような理由から、もう一度コルトレーンです。
「バラード」はタイトル通り、バラードばかりが収録されています。
情熱的で激しい演奏をするコルトレーンの中で「バラード」はかなり異色です。しかし、雑な演奏になることは全くなく、優しく、それでいて情熱的な演奏になっています。
バラードなので速いパッセージはほとんどありません。楽譜通りに演奏するだけなら初心者でもできそうです。しかし、コルトレーンほどの演奏には絶対になりません。
コルトレーンは本当に「情熱的な音楽とはどういうものか」を誰よりも教えてくれるサックス奏者だと思っています。
実は「バラード」を4番目に選出した理由はもう一つあります。
それは「バラード」の2曲目に収録されている「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」が、2番目に紹介したロリンズの「サキソフォン・コロッサス」の2曲目にも収録されているからです。
同じ曲をコルトレーンとロリンズで聴き比べることができます。同じ曲とは思えないほど2人の個性が出ています。
私は最初、同じ曲だと気づきませんでした。
5.ゴー(デクスター・ゴードン)
録音時の年齢 | 39才 |
録音された年(西暦) | 1962年 |
使用サックス | テナーサックス |
収録時間 | 37分 |
5枚目はデクスター・ゴードンの「ゴー」です。デクスター・ゴードンの魅力を言葉で表現するのは難しいのですが、あえて言葉にすれば「説得力のある音」ではないでしょうか。
デクスター・ゴードンは7才年下のロリンズにも影響を与えたと言われており、確かにロリンズとデクスターは似ていると感じます。
デクスター・ゴードンの説得力あふれる音はサックス奏者にとって勉強になること間違いなしです。
6.サックス・ア・ゴー・ゴー(キャンディ・ダルファー)
録音時の年齢 | 24才 |
録音された年(西暦) | 1993年 |
使用サックス | アルトサックス |
収録時間 | 53分 |
サックス上達のために音楽を聴く場合、聴く音楽はできるだけ偏らないようにすることが大切です。
ここまで男性サックス奏者ばかりが続いたので、女性サックス奏者のキャンディ・ダルファーの「サックス・ア・ゴー・ゴー」を選出しました。
きれいなだけの人ではありません。実力は圧倒的に本物です。
ノリノリのアップな曲ばかりで、これまでの5枚とは全く異なる雰囲気です。こういった音楽を目指す方は絶対に聴くべき名盤です。
7.パールズ(デビッド・サンボーン)
録音時の年齢 | 50才 |
録音された年(西暦) | 1995年 |
使用サックス | アルトサックス |
収録時間 | 51分 |
次はデビッド・サンボーンの「パールズ」です。サンボーンは個人的にものすごく好きで、最も多く聴いたかもしれないのが「パールズ」です。
よく「ギターが歌っている」などといった表現がありますが、サックスが歌うという表現がぴったりなのがサンボーンです。
4曲目の「パールズ」や8曲目の「エブリシング・マスト・チェンジ」のロングトーンなど、本当にサックスがないているようです。
サンボーンは幼い頃に小児麻痺にかかって後遺症が残り、リハビリのためにサックスを始めたと言われています。後遺症のためか、マウスピースを斜めに構えてサックスを演奏しています。
楽器の構え方やサンボーン独特のアルトサックスの音は非常にかっこよく魅力的で大好きです。しかし、初心者がまねするのはリスクも大きいと考え、7番目にしています。
そもそもメタルのマウスピースでなぜこんなに暖かい音が出せるのか不思議でなりません。私の中で、アルトサックス奏者のスーパースターはサンボーンです。
8.ストレイト・トゥ・ザ・ハート(デビッド・サンボーン)
録音時の年齢 | 39才 |
録音された年(西暦) | 1984年 |
使用サックス | アルトサックス |
収録時間 | 52分 |
サックス上達のために音楽を聴く場合、聴く音楽はできるだけ偏らないようにすることが大切です。しかし連続でサンボーンです。
理由は先程紹介した「パールズ」と聴き比べてほしいからです。「パールズ」はすごく悲しくて哀愁がただよう曲が収録されています。音色も暗めです。
対して「ストレイト・トゥ・ザ・ハート」は非常に明るい曲が収録されています。音色も明るいです。
「パールズ」と「ストレイト・トゥ・ザ・ハート」の2枚は音色をコントロールするということはどういうことなのかを教えてくれます。
9.レフト・アローン(ジャッキー・マクリーン)
録音時の年齢 | 29才 |
録音された年(西暦) | 1960年 |
使用サックス | アルトサックス |
収録時間 | 38分 |
9番目はジャッキー・マクリーンの「レフト・アローン」です。マクリーンを選んだ理由は、音程がずれていることが魅力になっていると感じるからです。
サックスに限らず、最近の音楽シーンでは「音程が正確だと上手」「音程がずれると下手」ということが常識のように言われています。
その結果、「いかに正確な音程で正確なリズムを刻むか」にこだわりすぎるミュージシャンが増えているように感じます。
しかし、音程にこだわりすぎるのは間違っているのではないかと教えてくれるのがジャッキー・マクリーンの演奏です。
「レフト・アローン」は「音程よりも大切なものが音楽にはある」ということを思い出させてくれます。
音程にこだわりすぎて大切なものを見失いそうな方には必ず聴いてほしい名盤です。
10.ザ・コレクション2(マルタ・アルゲリッチ)
録音時の年齢 | 26才~63才 |
録音された年(西暦) | 1967年~2004年 |
使用楽器 | ピアノ |
収録時間(7枚合計) | 7時間38分 |
サックス上達のために音楽を聴く場合、聴く音楽はできるだけ偏らないようにすることが大切です。
サックスだけを聴いていてはなかなか音楽の幅が広がりません。サックス以外の音楽も積極的に聴くことが大切です。
というわけで、最後はマルタ・アルゲリッチの「ザ・コレクション2」です。
サックス以外の名盤として「ザ・コレクション2」を選んだ理由は次の3つです。
- 基礎練習の大切さが分かる
- アンサンブルの素晴らしさが分かる
- 年齢を重ねることで同じ人でもどれだけ音が変わるのかが分かる
基礎練習の大切さが分かる
「ザ・コレクション2」はアルゲリッチのピアノと世界的なオーケストラで収録されています。全ての技術が人類トップクラスです。
特にクラシックは信じられないくらいの基礎練習を必要とします。
「ザ・コレクション2」を聴くと、この演奏をしている方々がどれだけの基礎練習をしてきたのか耳で聴くことができ、基礎練習を大切にしようという気持ちになります。
アンサンブルの素晴らしさが分かる
サックスに限らず、音楽は人と人とのコミュニケーションです。「演奏者と聴衆」のコミュニケーションであり、「演奏者同士」のコミュニケーションでもあります。
どんなジャンルの音楽であれ、どんなジャンルの楽器であれ、一人で完結することはありません。
「ザ・コレクション2」を聴くことで、音楽のコミュニケーションの素晴らしさを感じることができます。
自分の音楽は独りよがりなものになってしまっていないのか、自分の身を振り返るには最適の名盤です。
年齢を重ねることで同じ人でもどれだけ音が変わるのかが分かる
「ザ・コレクション2」は7枚組で、それぞれ別の年代で収録されています。最も若いときの収録が26才、最も経験を重ねた収録が63才です。
26才でこの技術は凄まじいですが、さらに感じるのは「同じ人間でこんなにも音が変わるのか」という事実です。
ピアノは楽器としての完成度が非常に高く、そのかわり、演奏家の表現の幅というものが非常に限られます。
音数は多いのですが、単音へのアプローチの手段が極めて限定されていて、「ビブラート」はおろか「クレッシェンド」すらできません。
「ベンド」や「フォール」などもできませんし、ギターでいう「チョーキング」のようなアプローチもできません。
ピアノの音は「最初にややアクセントがかかったあと、音量がだんだん小さくなっていく」ということが宿命づけられています。
そんなピアノという楽器でこれほど音が変わるというのは本当にすごいことです。
どんな原理でこれだけ音が変わるのかは分かりませんが、「ザ・コレクション2」を聴くことで「音色」というものに対して理解を深めることができます。
【まとめ】いい演奏のためには名盤・名曲をたくさん聴こう
いい演奏のためにはいい音楽を聴くことが大切です。
「サックス上達のために聴くべき名盤・名曲10選」をもう一度最後にまとめます。
- ブルー・トレイン(ジョン・コルトレーン)
- サキソフォン・コロッサス(ソニー・ロリンズ)
- サムシン・エルス(キャノンボール・アダレイ)
- バラード(ジョン・コルトレーン)
- ゴー(デクスター・ゴードン)
- サックス・ア・ゴー・ゴー(キャンディ・ダルファー)
- パールズ(デビッド・サンボーン)
- ストレイト・トゥ・ザ・ハート(デビッド・サンボーン)
- レフト・アローン(ジャッキー・マクリーン)
- ザ・コレクション2(マルタ・アルゲリッチ)
全て名盤です。聴いて損することは絶対にありません。
聴くときはできるだけ良質な環境で聴いてください。出す音も変わってくるはずです。
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